授業を聴講するだけでなく、聴講生どうしの交流、さらには学生や先生方とのコミュニケーションを深めたいという思いは、市民聴講生制度が発足して以来、多くの聴講生に共有されてきました。それがこの会の基盤となったといえるでしょう。
個人的なレベルで積極的に学生と交流したり、指導教員との関係を深めたり、大学の行事に積極的に参加したり、知り合った聴講生同士で定期的に昼食会をもつというようなことが、さまざまなかたちで行われてきました。
聴講生が一堂に会する機会として、年に2回、各学期末に開催されてきた修了式があり、修了証の受領後、何名かの先生や職員の方を交えて1時間ほど懇談の時間が持たれてきました。そこでは、自己紹介、大学に対する質問や要望に加えて、正規学生や先生方との交流に対する期待が語られ、聴講生の自主的な集まりが必要だという意見も幾度か出されました。
そんな中で、会の誕生に向けて弾みをつけたのが、2011年度後期に実施された市民聴講生を対象とするアンケート調査とその報告会です。これは、「生涯学習論」を受講していた4名からなる「『生涯学習論』聴講生研究グループ」が、授業での学習をさらに深め、発展させるための自主的課外活動として取り組んだもので、科目担当の先生の協力を得つつ、2011年11月下旬から12年2月上旬まで3か月近くかけて質問票の作成、配布、回収から回答の分析、報告書の作成までを行いました。
他の科目の聴講生の顔も名前もほとんどわからない状況で、質問票の配布も、受講者のいる授業科目の教室に行き、それらしい人に手渡しするという手作業で行われました。渡したら先生だったというエピソードもあります。とはいえ、手渡しできた聴講生の多くが積極的に協力してくれ(回答率69%)、市民聴講生の実態や聴講制度の意義を実証的に解明するための貴重なデータを集めることができました。研究グループはそれを分析して『報告書』を作成し、2012年2月8日には「アンケート調査の報告と交流の集い」を開催しました。
(注)報告書は5年前のものですが、一般聴講生(旧市民聴講生)とはなにかを知るうえで貴重な資料です。是非ご一読ください⇒
市民聴講生調査報告書
報告会には20名以上の市民聴講生が参加し、質疑応答や討論を通じて市民聴講生の実態や問題についての認識を深め、共有する場となりました。このような自主的な会合、交流を今後も継続したいという要望も出され、そのために何らかの組織を立ち上げることが、聴講生有志によって検討されるようになりました。そして、1年半余り経過した2013年11月、研究グループのメンバーだったOさんと新たに市民聴講生となったIさんの両名によって「東京外国語大学市民聴講生の会」が立ち上げられました。会は外語祭の時期に合わせて会員募集のチラシを配布するとともに、外語祭見物に訪れた近隣市民に対する聴講生制度紹介企画に取り組みました。
会の有志は2014年11月の外語祭でも「哲学カフェ」を開催しました。その準備の過程で、会の活動の柱となる継続的な学習会、しかも市民聴講生の会ならでは学習の場をスタートさせようということになりました。そして、ちょうど「哲学カフェ」に来店してくれた国際社会科学部長(当時)岩崎稔教授にゲストスピーカーを依頼したところ、快諾していただけました。こうして2015年1月15日、「第1回市民聴講生の集い/フリーアカデミー」が開催されました。参加者は30名を超え、「21世紀の大学と市民の学び」をテーマに岩崎先生との活発な討論が行われました。
「フリーアカデミー」はその後も学内の先生がたの理解と協力を得て継続され、今年(2016年)1月22日には第6回目を開催し、今後も隔月のペースで開催する予定です。
「フリーアカデミー」には毎回2〰30名の聴講生が参加しています。そのうち常連的な参加者で会場の準備などを手伝う10名ほどが市民聴講生の会のコアメンバーだといえるでしょう。特に会員登録とか役割分担などはなく、会費も徴収しない、自発的なネットワーク型の集まりです。
今年2月17日の修了式の後に、今後の会のありかたを検討する会合が開かれました。そこでも、当分の間はそのようなゆるやかな組織形態でやっていこうということになりました。会の名称に関しても、制度の名称が「一般聴講生」に変更されていることを踏まえて、様々な意見が出されましたが、とりあえずは一般聴講生制度を利用している市民の会という意味で「市民聴講生の会」で行くことになりました。